移動現象論
非定常系
輸送の一般式
\[ \begin{alignedat}{10} J &=& &-k& &\nabla F \\ 流束 &\propto& & & & 駆動力 \end{alignedat} \]
※ 駆動力があまり大きくないときに成り立つ現象論的な線形近似
- 運動量交換(ニュートンの粘性法則)
\[ \tau_{xy} = -\mu \pd[v_x]{y} \]
- 熱伝導(フーリエの法則)
\[ q = - \lambda \nabla T \]
- 拡散(フィックの第1法則)
\[ j = - D \nabla C \]
- 電流
\[ j = - \sigma \nabla V \]
拡散
フィクスの第1法則
混合流体中のある成分の濃度場を \(C(x)\) とする.全ての分子はランダムに等方的に拡散する.ある微小面の両側に濃度勾配がある場合,等方的な拡散の結果として,濃度を均一にする方向に分子が動いたようにみえる.
濃度場 \(C\) と拡散流束 \(q\) とに
\[ q = -D \nabla C \]
\(D\) : 拡散係数
の関係(フィクスの第1法則)が見られる.
拡散方程式(フィクスの第2法則)
\[ \pd[C]{t} = \kappa_C \nabla^2 C \]
\(\kappa_C:=\frac{k_C}{\rho}\) : 質量拡散係数
静止した混合流体中に閉曲面 \(A\) と \(A\) に囲まれた閉領域 \(V\) をとる.
質量保存則より,\(V\) 内質量の増加量は \(A\) の表面からの流入量と等しいので,(\(n_A\) は外向きを正とする.最後の変形にガウスの発散定理を用いる.)
\[ \pd{t} \int_V \rho C dV = - \int_A q \cdot n_A dA = \int_A (k_C \nabla C) \cdot n_A dA = \int_V \nabla (k_C \nabla C) dV \]
\(V\) は任意なので,
\[ \rho \pd[C]{t} = k_C \nabla^2 C \]
拡散係数の導出
ブラウン運動から
フィクスの第1法則はブラウン運動のモデル(ランダムに分子が運動するモデル)で説明できて,
\[ D = \mu k_B T \]
\(\mu\) : 移動度
低レイノルズ数の液体を媒体とした球形粒子の拡散の場合,
\[ D = \frac{k_BT}{6\pi \eta r} \]
\(\eta\) : 動粘性係数
ボルツマン輸送方程式から
Chapman & Cowling (1939) を読むと良いらしい
位相空間上の分布関数 \(f(x,v,t)\)
状態が平衡状態 \(f_0\) に近いとき,緩和時間近似により,
\[ \pd[f]{t} + v \cdot \nabla f = -\frac{f-f_0}{\tau} \]
\(F=f-f_0\) として,
\[ \pd[F]{t} + \frac{F}{\tau} + v \cdot \nabla F = 0 \]
濃度場は
\[ C(x,t) = \iiint f(x,v,t) dv \]
拡散流束は
\[ q(x,t) = \iiint v f(x,v,t) dv \]
濃度場の勾配を求める
\(x\) 成分をみると
\[ \pd{x} C = \pd{x} \iiint f(x,v,t) dv_x dv_y dv_z \]
温度勾配による拡散
\[ q = -k_C\left[\nabla C + \frac{k_T}{T} \nabla T\right] \]
熱伝導
フーリエの法則
温度場 \(T\) と熱流束 \(q\) とに
\[ q = - k \nabla T \]
熱伝導係数 \(k\)
の関係(フーリエの法則)が見られる.
熱伝導方程式
\[ \pd[T]{t} = \kappa_T \nabla^2 T \]
温度拡散係数 \(\kappa_T:=\frac{k}{\rho C_p}\)
静止流体中に閉曲面 \(A\) と \(A\) に囲まれた閉領域 \(V\) をとる.
\(V\) 内の熱エネルギーの時間変化は
\[ \pd[Q]{t} = \int \rho C_P \pd[T]{t} dV \]
エネルギー保存則より,\(V\) 内エネルギーの増加量は \(A\) の表面からの流入量+内部発熱 \(qV\) に等しい.内部発熱がない場合,
\[ \int \rho C_P \pd[T]{t} dV = - \int_A q \cdot n_A dA = \int_A (k \nabla T) dA = \int_V \nabla (k \nabla T) dV \]
\(V\) は任意なので,
\[ \rho C_P \pd[T]{t} = k \nabla^2 T \]