グリーン関数
線形微分方程式
線形微分演算子 \(L\) について、微分方程式
\[ L[y(x)]=f(x) \]
を線形微分方程式という。特に\(f(x)=0\)のとき、同次微分方程式という。
逆演算子 \(L^{-1}\) が求まれば、\(y(x)=L^{-1}[f(x)]\)だが、一般に逆演算子を求めるのは難しい。
演算子
\(L\)は関数を引数に取り関数を返す関数(演算子)。フーリエ変換・ラプラス変換と同じタイプ。
線形演算子は、線形性
- \(L[cy(x)]=cL[y(x)] \t (c\in \R)\)
- \(L[y_1(x)+y_2(x)]=L[y_1(x)]+L[y_1(x)]\)
を満たす。
線形微分演算子は一般に
\[ L=a_n(x)\dn{}{x}{n}+a_{n-1}(x)\dn{}{x}{n-1}+...+a_1(x)\d{}{x}+a_0(x) \]
と書ける。
関数空間
関数空間は線形空間になっている。
内積を
\[ \inner{f}{g}=\int_{-\infty}^{\infty}f(x)g(x)dx \]
とする。
微分演算子は
\[ \begin{aligned} \inner{\d{}{x}f}{g} &= \int_{-\infty}^{\infty}\d{}{x}f(x)g(x)dx \\ &= [f(x)g(x)]_{-\infty}^{\infty} - \int_{-\infty}^{\infty}\d{}{x}f(x)g(x)dx \\ &= -\inner{f}{\d{}{x}g} \end{aligned} \]
ただし、 \(f(x),g(x)\) は \(\pm\infty\) で \(0\) になるものだけを扱う。
解の任意性
非同次方程式\(L[y(x)]=f(x)\)の解に、同次方程式\(L[y_0(x)]=0\)の解を加えても、線形性から、
\[ L[y(x)+cy_0(x)]=f(x) \t (c\in \R) \]
を満たす。つまり、線形微分方程式の解は無数にあることになる。
同次線形微分方程式
同次形の線形微分方程式は一般に
\[ a_n(x)\dn{y}{x}{n}+a_{n-1}(x)\dn{y}{x}{n-1}+...+a_1(x)\d{y}{x}+a_0(x)y \]
グリーン関数
非同次微分方程式
\[ L[y(x)]=f(x) \]
を解きたい。
逆演算子 \(L^{-1}\) を求めて、
\[ y(x)=L^{-1}[f(x)] \]
としたいが、一般に逆演算子を求めるのは難しい。
そのため、 \(f(x)\) をスライスする。
\[ f(x) =\int_{-\infty}^{\infty} f(\xi)\delta(x-\xi) d\xi = f(x) * \delta(x) \]
\(f(x)\) のかわりに、デルタ関数 \(\delta(x-\xi)\) について、
\[ G(x;\xi)=L^{-1}[\delta(x-\xi)] \]
を解く。この解 \(G(x;\xi)\) のことをグリーン関数という。
グリーン関数を\(f(x)\)で加重積分してもとの\(f(x)\)を戻してやると、解が得られる
\[ \begin{aligned} y(x) &= L^{-1}[f(x)] \\ &= L^{-1}\l[\int_{-\infty}^{\infty} f(\xi)\delta(x-\xi) d\xi\r] \\ &= \int_{-\infty}^{\infty} f(\xi) L^{-1}[\delta(x-\xi)] d\xi \\ &= \int_{-\infty}^{\infty} f(\xi) G(x,\xi) d\xi \end{aligned} \]
グリーン関数の求め方
フーリエ変換を使って求める。グリーン関数の逆フーリエ変換式
\[ G(x)=\f{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}G(k)\exp(ikx)dk \]
デルタ関数の逆フーリエ変換式
\[ \delta(x)=\f{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\exp(ikx)dk \]
これをグリーン関数の式
\[ L[G(x)]=\delta(x) \]
に代入して、
\[ L\l[\f{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}G(k)\exp(ikx)dk\r]=\f{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\exp(ikx)dk \]
\(L\) は \(x\) に対して作用するので、
\[ \int_{-\infty}^{\infty}G(k)L[\exp(ikx)]dk=\int_{-\infty}^{\infty}\exp(ikx)dk \]
\(L\) は \(\exp(ikx)\) に作用すると、
\[ \dn{}{x}{n} \ra (ik)^n \]
と数に変換される。
\[ L \ra L(k) \]
とおくと、
\[ \int_{-\infty}^{\infty}G(k)L(k)\exp(ikx)dk=\int_{-\infty}^{\infty}\exp(ikx)dk \]
両辺の被積分関数を比較して、
\[ L(k)G(k)=1 \]
\(k\)空間のグリーン関数\(G(k)\)が求まったので、\(x\)空間に戻すと、
\[ G(x)=\f{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}\f{1}{L(k)}\exp(ikx)dk \]
半円形の経路で複素積分して求める。円弧の部分は \(0\) になる。\(L(k)=0\) なる点 \(k_0\) を探して留数定理で求める。
\[ \mathrm{Res}(k_0)=\l[(k-k_0)\f{1}{L(k)}\exp(ikx)\r]_{k=k_0} \]
\[ G(x) = 2 \pi i \sum_{L(k)=0} \mathrm{Res}(k) \]
多変数関数
\[ L[u(\bm{r})]=f(\bm{r}) \]
のグリーン関数は、
\[ L[G(\bm{r};\bm{r'})]=\delta^3(\bm{r}-\bm{r'}) \]
ラプラス方程式
\[ \nabla^2 \phi = 0 \]
\[ L=\nabla^2 \]
直交座標
円筒座標
ベッセル関数
球座標
球面調和関数
ポアソン方程式
\[ \nabla^2 \phi = f \]
グリーン関数
\[ L = \nabla^2 \]
\[ L[G(\bm{r})]=\delta^3(\bm{r}-\bm{r'}) \]
逆フーリエ変換
\[ \delta^3(\bm{r}) = \f{1}{(2\pi)^2} \iiint_{-\infty}^{\infty} \exp(i\bm{k}\cdot\bm{r})d^3\bm{k} \]
ヘルムホルツ方程式
\[ \nabla^2 u + \alpha^2 u = 0 \]
グリーン関数
\[ L = \nabla^2 + \alpha^2 \]
\[ L(k) = -k^2 + \alpha^2 \]
\[ G(k)=\f{1}{\alpha^2-k^2} \]
\[ G(x) = \f{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty} \f{1}{\alpha^2-k^2} \exp(ikx) dk \]
この特異点\(k=\pm \alpha\)は実軸上にあるので、積分経路上から除かないといけない。
\[ \int_{-\infty}^{\infty} \f{1}{k^2-(\alpha+i\eps)^2} \exp(ikx) dk \]
\[ G(x)=-\f{i}{2\pi}\exp(\pm i\alpha x) \]
拡散方程式
\[ \pd{}{t} \phi = D\nabla^2 \phi \]
\[ L = D \nabla^2 - \pd{}{t} \]
グリーン関数
\[ \begin{aligned} G(x,t;\xi,\tau) &=L^{-1}[\delta(x-\xi)\delta(t-\tau)] \\ &=-\f{1}{2\pi\sqrt{\pi D (t-\tau)}}\exp\l(-\f{(x-\xi)^2}{4D(t-\tau)}\r) \end{aligned} \]
波動方程式
\[ \pdd{}{t}u = c^2\nabla^2 u \]
\[ L = c^2\nabla^2 - \pdd{}{t} \]
グリーン関数
\[ \begin{aligned} G(x,t;\xi,\tau) &=L^{-1}[\delta(x-\xi)\delta(t-\tau)] \\ &=-\f{1}{2\pi\sqrt{\pi D (t-\tau)}}\exp\l(-\f{(x-\xi)^2}{4D(t-\tau)}\r) \end{aligned} \]
ラプラス方程式
\[ \nabla^2 \phi = 0 \]
ポアソン方程式
\[ \nabla^2 \phi = \rho \]