トランジスタの使い方

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2 本足の抵抗やコンデンサに比べて、3 本足のトランジスタの使い方は途端に難しく感じられます。

こういう、トランジスタが複雑に絡み合った回路を見ると、全くお手上げになってしまうかも。

しかし、このような複雑な回路も、基本的な 3 種類のトランジスタ回路の組み合わせにすぎません。

トランジスタの使い方

トランジスタは小さな電流・電圧で大きな電流・電圧を制御する素子です。電気的なバルブ、蛇口だと思ってください。

トランジスタには、アナログ的な使い方と、デジタル的な使い方があります。蛇口も同じです。蛇口を弱く回せば水流を調整することができますし、全開にすれば水のスイッチとして使えます。

トランジスタも、入力に比例して出力するようにしたり、ON/OFF のスイッチとして使うこともできます。

アナログ的な使い方は、たとえば、ラジオの微弱な信号を増幅してスピーカーで聞こえるようにしたり、センサの電流を増強して処理回路に渡したりします。

デジタル的な使い方は、たとえば、モーターの ON/OFF を制御したり、論理回路のゲートとして使うことです。

いろいろなトランジスタ

よく使われるトランジスタには大きく3種類あります。

バイポーラ
トランジスタ
BJT
電界効果
トランジスタ
MOS-FET
絶縁ゲート
バイポーラ
トランジスタ
IGBT
入力 電流 電圧 電圧
入力インピーダンス 低い 高い 高い
スイッチング速度 遅い 速い 中間

このような特徴から、アナログ回路には BJT、デジタル回路には FET、パワー回路には IGBT が使われることが多いです。

よく誤解されがちですが、BJT をデジタル的に、FET をアナログ的に使うこともできます。

バイポーラトランジスタ

トランジスタには、ベース・コレクタ・エミッタの 3 本のピンが生えています。

トランジスタは電流の蛇口です。コレクタ・エミッタ間電流を流す量を、ベースに流れる電流で制御します。

ベース・エミッタ間の電流 \(I_{BE}\)\(h_{FE}\) 倍の電流を コレクタに流す。

\[ I_C = h_{FE} I_B \]

また、トランジスタは電流を吸い込んだり、吐き出したりするわけではないので、キルヒホッフの法則から、

\[ I_E = I_B + I_C \]

増幅率 \(h_{FE}\) が十分大きいと仮定すると、

\[ I_E = I_B + I_C \approx I_C \quad (I_B \ll I_C) \]

エミッタ接地

最も基本的な回路です。

\[ I_B = \f{V_{IN}-V_{BE}}{R_B} \]

\[ I_C = h_{FE} I_B \]

\[ V_{OUT} = V_{CC} - R_C I_C \]

コレクタ接地

\[ V_{OUT} = V_{IN} - V_{BE} \]

\[ I_E = \f{V_{IN}-V_{BE}}{R_E} \]

\[ I_B = \f{1}{1 + h_{FE}} I_E \]

\(R_E\) 定電圧電源として使えます

ベース接地

エミッタ接地に似た回路です。入力は負電圧です。

\[ I_E = \f{V_{IN} - V_{BE}}{R_E} \]

\[ I_E = I_B + I_C \approx I_C \quad (I_B \ll I_C) \]

\[ V_{OUT} = V_{CC} - I_C R_C \]

ダイオードとして使う

ベース-エミッタ間だけをみると、 PN 接合のダイオードとみなせます。

\(V_{BE}\) の電圧降下が欲しいときに使います。

定電流回路

ベース接地回路を使って、

ただ、\(V_{CC}\) が変わると、定電流ではなくなります。

そこで、\(V_{BE}\) が一定であることを利用します。

カレントミラー

入力側のトランジスタはベース-コレクタが接続されているので、ダイオードとみなせる。

ベース入力電圧は、

\[ R I_{IN} + V_{BE} \]

\[ R I_{OUT} + V_{BE} \]

\(I_{OUT}<I_{IN}\) になると、ベース電流が増大し、\(I_{OUT}\) も増加します。

\(I_{OUT}>I_{IN}\) になると、\(V_E\) が上昇し、トランジスタ OFF になるので、\(I_{OUT}\) は減少します。 ※ 突然トランジスタが OFF になって、\(I_{OUT}=0\) になるわけではない。過渡部分で徐々に電流が減る。

差動増幅回路

プッシュプル

コンプリメンタルな NPN と PNP を使う。

\(V_{IN}>V_{BE}\) のとき、NPN が ON に、PNP が OFF になるので、NPN のコレクタ接地回路とみなせる。

\(V_{IN}<-V_{BE}\) のとき、PNP が ON になり、NPN が OFF になるので、PNP のコレクタ接地回路とみなせる。

入出力のグラフはこうなる。0V 付近で途切れている。

これを回避するために、入力にバイアスを加えたものが次の回路。

クロスオーバー

入力部分にトランジスタを追加した。

ベース-コレクタが接続されているので、ダイオードとみなせる。

ダイオードにより、バイアスがかかるので、

\[ V_{BNPN} = V_{IN} + V_{BE} \]

\[ V_{BPNP} = V_{IN} - V_{BE} \]

よって、NPN が ON になる条件は、\(V_{IN}+V_{BE}>V_{BE} \therefore V_{IN}>0\)。PNP が ON になる条件は、\(V_{IN}-V_{BE}<V_{BE} \therefore V_{IN}<0\)。これで、入出力のグラフが綺麗な直線になった。

電界効果トランジスタ